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相続財産の調査

相 続 財 産 の 調 査

 

相続する遺産とは

  民法第896条(相続の一般的効力)

  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

 

相続する遺産は、被相続人が権利・義務を有していたもの、ほぼ全てが該当し、プラスの財産の他にマイナスの財産もあり、正確に把握し財産目録を整理する必要があります。特にマイナスの財産が多い場合など相続の放棄手続をするには、相続開始があったことを知った時から、3カ月以内に手続きをする必要がありますので注意しなくてはなりません。

  〔遺産となるもの〕

   不動産、現金、預貯金、借金や未払い金、有価証券、自動車、貴金属、ゴルフ会員権、特許権、損害賠償請求権など

  〔遺産には含まれないもの〕

  ・生活保護受給権など

  ・墓地・墓石(祭祀財産など)

  ・身元保証人としての地位

 

相続財産の調査方法

1.不動産等

納税通知書・・毎年4月ごろ市町村役場から送られてきます。固定資産税が課税されている不動産であれば必ず記載されています。

権利証(又は登記識別情報通知)・・納税通知書に記載されていない不動産(市道や墓地)についても、確認ができます。

名寄帳(市町村役場が管理する台帳)・・非課税の不動産も記載されています。また、共有名義の不動産は別々に管理されていますので、役場に交付を受ける際、注意が必要です。

固定資産評価証明書・・市町村役場が固定資産税を課税する際の不動産ごとの評価額が記載された書類です。

登記簿謄本(登記事項証明書)・・法務局にある不動産登記簿には、所有者の名義やその他の権利関係(抵当権等)など、不動産に関するすべての情報が記載されています。

契約書など・・・・土地・建物以外にも借地契約などの権利があれば、相続財産となる場合があります。

 

2.預貯金

通帳、キャッシュカード、金融機関からの郵便物等・・ネットバンクもあるので、PC

    スマホの確認も必要。→金融機関が特定できれば残高証明書を発行してもらう。

 金融機関への問い合わせ・・取引金融機関が不明の場合、想定できる金融機関に必要書類を添えて照会することとなります。

   

3.有価証券等

上場株式・投資信託は毎年郵送されてくる年間取引報告書で確認できます。→各証券会社等に名義人死亡時点の残高証明書を発行してもらう。

証券会社が判らない場合・・「証券保管振替機構(ほふり)」に開示請求をすることにより、どこの証券会社と取引があるかわかります。

〇添付書類:開示請求書、法定相続人の本人確認書類、相続人の戸籍謄本、被相続人の戸籍謄本等、被相続人の住所がわかる資料。

→証券会社が判ったら、直接証券会社に照会することとなります。

 

4.ローン・借金等の債務

   金融機関の通帳の取引履歴・・金融機関の通帳引落の確認。

       ※住宅ローンの場合、団体信用生命保険に加入していれば、残債務が一括返済となりますので手続きが必要です。(相続人が住宅ローンを払う必要がなくなるので、その請求手続きを行います。)

  借入先からの残高通知・・債権者からの郵便物による確認。

   各信用情報機関(CIC(クレジット・信販会社系)、JICC(株式会社日本信用情報機構)、JBA(全国銀行個人情報センター)への情報開示請求・・借入が不明な場合、過去のローンやキャッシングなどの情報の開示請求をすることができます。

   保証債務の調査・・誰かの保証人になっていた場合も、基本的に相続人が相続することになりますので、契約書等があるかどうかの確認が必要です。

     〇相続の対象となる連帯保証債務

      ・特定保証(主たる債務が特定されている保証)の連帯保証債務

      ・極度額の定めがある根保証(主たる債務が特定されていない保証)の連帯保証債務 

      ・極度額の定めがない根保証の連帯保証債務のうち、相続発生時点で既に発生してい

      るもの

     〇相続の対象とならない連帯保証債務

      ・極度額の定めがない根保証の連帯保証債務のうち、相続発生時点で未発生のもの

      ・身元保証の保証債務

      ※保証債務が明らかとなった場合には、相続放棄や限定承認の手続きも検討しなけれ

      ばならないことから、専門家に相談された方がよいでしょう。

 

遺産分割前の相続預金の払い戻し制度

  被相続人の預金について、遺産分割が終了する前であっても、各相続人が当面の生活費や故人の入院費、葬儀のための費用などの支払いが必要になった場合、払い戻しを受けることができる制度が201971日から施行されました。

    金融機関での払い戻し手続き

 ◎払い戻し限度額=預金残高×1/3×払い戻しを受ける人の法定相続割合

※預金残高は預金種別ごとに計算します。ただし、同一金融機関からの払い戻し上限額は、150万円までとされています。

  ◎払い戻しに必要な書類

    ・被相続人の除籍謄本、戸籍謄本(出生から死亡まで)

    ・相続人全員の戸籍謄本

    ・払い戻しを希望する人の印鑑証明書

    ※ただし、金融機関により必要となる書類が異なる場合があるので、問い合わせが必要です。

    家庭裁判所の保全処分による払い戻し手続き

◎家庭裁判所に遺産の分割の審判や調停が申立てされている場合には、裁判所に申立てを行ない、審判を得ることによって金融機関から払い戻しを受けることができます。ただし、必要性が認められ、他の共同相続人の利益を害しないと認められる場合です。

◎払い戻しに必要な書類

  ・家庭裁判所の審判書謄本

  ・払い戻しを希望する人の印鑑証明書

 

  その後の遺産分割協議の際に、払い戻しを受けた相続人が遺産の一部分割により、これを取得

 したものとして取り扱われることとなります。

 

財産目録の作成

  相続財産の調査ができれば財産目録を作成することによって、相続人が遺産分割協議の際相続

 する財産を明確にすることができます。

 

  

 また、裁判所に申立てをする場合など、決められた財産目録の様式がありますので、参考としてください。⇒裁判所ホームページ「遺産分割調停」